プロテオミクス 受託解析(iMPAQT法)

プロテオミクス 受託解析サービス(iMPAQT法)
【ターゲット定量プロテオミクス】

最新の質量分析計を使ったタンパク質の網羅解析、バイオマーカー探索の定量プロテオーム解析受託追加サービスをご提供いたします。がん細胞を使用した基礎的な研究から、特に最近では外科的に切除した腫瘍組織中の分析でご好評いただいています。質量分析を使ったタンパク質の受託解析、検査・外注サービスをご要望の際は是非ともご相談ください。

【iMPAQT:ターゲット定量プロテオミクス】とは、代謝および免疫パスウェイや、お客様の所望するタンパク質(最大400種)を一括で定量分析するサービスです。「〇〇経路のタンパク質を纏めて定量したい」、「ウエスタンブロットなど抗体の性能が不十分で困っており、非特異反応を抑えて正確に定量分析したい」のような、分析ターゲットとなるタンパク質がある程度決まっているお客様にお勧めです。

(ターゲットを定めず網羅解析ご希望の方はこちらのページへ)

 

概要・特徴

プロテオーム解析には対象となるタンパク質の同定を目的とした定性分析から、個々の分子の量的関係を把握する定量分析まで、用途によって様々な分析法が存在します。当組合ではターゲット定量プロテオミクスである『iMPAQT法』を提供しています。

『iMPAQT法(in vitro proteome-assisted MRM for Protein Absolute QuanTification)』は九州大学・生体防御医学研究所の中山敬一 先生・松本雅記 先生らによって開発された次世代の定量プロテオミクス技術です1)。約18000種類のヒト組換えタンパク質について質量分析計で測定するためのメソッドデータベースを構築しており、数百種類のタンパク質を同時定量(最大400種/時間)することが可能です。特定のパスウェイのタンパク質を一度に定量分析したい場合や、抗体では分離の難しいサブタイプの分析をされたい方にお勧めです。

1)Matsumoto M, et al., A large-scale targeted proteomics assay resource based on an in vitro human proteome., Nat Methods., 2017 Mar;14(3):251-258.

特徴① 18000種類のヒト組換えタンパク質から構築された質量分析データベース

人工合成したヒト組換えタンパク質約18000種類をLC-MS/MS測定することにより、各タンパク質を質量分析測定するためのメソッドデータベースを構築しています。データベースは順次拡大しており、将来的にはマウスなど動物への適用も目指して開発を継続中です。

特徴② 高感度プロテオミクス前処理と高速スケジュール化MRM分析

九州大学 生体防御医学研究所の中山敬一 先生・松本雅記 先生の元で考案されたプロテオミクス用前処理手法(特許第6928816号)を用いて分析を行います。消化効率改善や吸着抑制効果を高めた前処理法となっており、目的タンパク質を高感度かつ高精度に検出します。また、高度にスケジュール化されたMRM分析により1時間で最大400種のタンパク質を定量分析することが可能です。

特徴③ 大規模分析から個別分析まで幅広いニーズに対応可能

iMPAQTデータベースを活用すれば、アイソザイムなど抗体では非特異反応により定量的な評価が難しいものも分析することが可能です。抗体性能でお困りの際は是非ともご相談ください 2) 。

2)Morita M, et al., PKM1 Confers Metabolic Advantages and Promotes Cell-Autonomous Tumor Cell Growth., Cancer Cell. 2018 Mar 12;33(3):355-367.

原理

基本的な原理はLC-MS/MSを用いたMultiple Reaction Monitoring(MRM)分析となります。MRM法は、四重極(Q-pole:Quadrupole)を3つタンデムに連ねた三連四重極型質量分析計において、プリカーサーイオンを通すQ1フィルターと、CID(衝突誘起解離)による開裂後の断片であるプロダクトイオンを通過させるQ3フィルターの組み合わせを設定することで、特定のペプチドを特異的かつ高感度に定量分析する手法です。

Multiple Reaction Monitoring(MRM)法の原理

MRMの感度や定量ダイナミックレンジは通常のフルスキャンMSスペクトルの取得と比べて格段に高いですが、一方でターゲットペプチドの質量(Q1 mass)やCIDによるフラグメントの質量(Q3 mass)を事前に知っておく必要があり、対象に合わせた各分析パラメーターの最適化も不可欠となります。iMPAQT法では組換えタンパク質をベースにこれら事前情報を取得・データベース化しているため、細胞や組織検体などの内在性タンパク質を効率よく定量分析することが可能です。

iMPAQT分析についての注意事項

本受託サービスでは、標準品として合成ペプチドをを用いて分析を行うため、得られる定量値は合成ペプチド換算の値となります(前処理工程でのタンパク質の精製や、酵素消化効率は反映されておりません)。また、定量値は添加した内部標準ペプチド濃度から算出した(一点検量線)での値となります。あらかじめご了承ください。

分析例1

11種類のヒト培養細胞中の代謝酵素約340種を一斉分析メソッドにて分析し、ヒートマップを作成しました。

各がん細胞の由来によって代謝酵素の特徴的な発現パターンを示しており、各細胞が増殖するためにどの経路を活性化させているのかを可視化する事が出来ました。またiMPAQT法では従来のショットガン法に代表される相対定量分析とは異なり、各酵素の発現量を定量値として算出できるため、それぞれの経路中での重要となる因子を把握する事が可能となります。

各培養細胞中の主要代謝酵素発現量比較

分析例2

同様の代謝酵素メソッドを用いて、細胞周期毎の分析を行いました。

HeLa細胞をthymidine blockにて細胞周期を同調後、2時間毎に細胞回収し代謝酵素発現量を測定しました。各代謝酵素定量値を元にヒートマップを作成すると、DNA合成期には多くの代謝酵素発現が抑制され、細胞分裂後成長期に入ると、解糖系・TCAサイクルの酵素が大きく発現上昇(白〇部分)している事が示されました。一つの細胞であっても、周期によってダイナミックに変化する事が、タンパク質発現のレベルで明らかにすることが可能となりました。本技術を用いれば、遺伝子発現解析だけではできなかった新たな知見を得るだけでなく、遺伝子解析のデータを補う研究にも活用いただく事ができます。

各細胞分裂周期での代謝酵素発現量比較

研究成果

1.宮城県立がんセンター研究所:盛田麻美 先生のiMPAQTを使った研究論文がCancer Cell 誌に掲載されました。→詳細はこちら

2.九州大学・生体防御医学研究所:小玉 学 先生のiMPAQTを使った研究論文がNature Communications誌に掲載されました。→詳細はこちら

3.久留米大学・医学部消化器内科部門:中野 暖 先生のiMPAQTとメタボロミクスを使った研究論文がPLoS One誌に掲載されました。→詳細はこちら

4.国立病院機構 福岡病院:豊川 剛二 先生のiMPAQT法を使った研究がESMO Congress 2021で発表されました。→詳細はこちら

 

新着情報からも閲覧できます。

関連論文掲載情報

測定機器

QTRAP®6500 システム(SCIEX社)
ACQUITY UPLC H-Class システム(Waters社)

測定サンプル

ヒト培養細胞

ヒト凍結組織

ゼノグラフトなど、ヒトサンプルを移植した組織

ヒト白血球、赤血球などの血球成分(お客様にて各血球を単離した場合のみ)

エクソソーム(お客様にてエクソソームを単離したサンプルの場合のみ)

その他につきましてはお問い合わせください。

サンプル調製

ヒト培養細胞:PBSで洗浄した培養細胞(2×10^6個以上)をペレットにし、-80℃以下で凍結保存

ヒト凍結組織:30 mg ~ 50 mg(5 mm×5 mm程度)にカットし、専用のマイクロチューブに入れ-80℃以下で凍結保存

詳細はお問い合わせください。

測定可能項目

①ヒト主要代謝酵素 約340種

数々の論文実績を誇るiMPAQT法を代表するアプリケーションです。 

②ヒト免疫応答関連タンパク質 約370種

PBMCなど血液中の免疫細胞へのアプリケーションやサイトカイン測定との組み合わせにより、免疫研究の新たな切り口になることが期待されます。

Toll-like receptor signaling pathway

IL-17 signaling pathway

 

タンパク質の詳細は測定対象リストをご参照ください。(2021年5月現在)

リスト内容は予告なしに変更する場合がございます。出検前にご確認ください。

ヒト主要代謝酵素リスト(96.7 KB)

ヒト免疫応答関連タンパク質リスト(176.38 KB)

カスタム分析(オーダーメイド測定)について

上記のリストにないタンパク質についても、ご希望に合わせて測定可能かどうかお調べいたします。

ウエスタンブロットが上手くいかないタンパク質の測定など是非ご相談ください。

価格

ご依頼内容により価格は変動いたします。

ホームページのお問い合わせフォームか、お電話にてお問い合わせください。

 

以下の事例は参考価格です。 

外科的手術で切除した凍結保存の癌組織6サンプル(Control群3サンプル、処理群3サンプル等)を出検いただいた場合

→組織前処理作業から質量分析測定および最終報告書作成まで実施

【アカデミア価格】総額:税抜 90万円(税込 99万円)

【通常価格】総額:税抜 120万円(税込 132万円)

 

なお、以下のような条件により価格が変動いたします。

・検体数(多い場合、ボリュームディスカウントが可能です)

・特殊な前処理が必要

・カスタム分析(代謝酵素、免疫関連リスト以外のオーダーメイド測定)

納期

検体受領より4~8週間

カスタム分析の場合は標準品の納品と検体受領が完了してから2ヶ月程度

納品物

・報告書

・LC-MS/MS測定データ (.wiff及び.scanファイル)、クロマトグラム解析データ(.imqtファイル)、検出タンパク質名や定量値などを記載したリスト(Excelファイル)を収納したCD-R

分析結果例(103.87 KB)

問い合わせ

リーフレット

プロテオミクス(iMPAQT法)(1.08 MB)